G-1RJHFSJT4Z
映画紹介

『教皇選挙』を2倍楽しむ|コンクラーベとは?

© 2024 Conclave Distribution


1. はじめに

世界にはさまざまな宗教がありますが、その中でも最も信徒数が多いキリスト教の一派に「カトリック教会」があります。カトリック教会を頂点で導く存在が「ローマ教皇(通称:法王、英語ではPope)」です。このローマ教皇が退位したり亡くなったりして、その座が空位になったときに、新しい教皇を選ぶ選挙こそが「コンクラーヴェ」です。

このコンクラーヴェは、日本で一般的にイメージする政治の選挙とはかなり違う仕組みを持っています。たとえば、カトリック教会の中でも最高位の聖職者たちだけが投票に参加したり、選挙のために外部との連絡を一切遮断したり、投票結果を伝える煙の色が変わったりと、とてもユニークな方法で行われるのです。

2025年3月20日(木)に全国公開される『教皇選挙』は、このコンクラーベを題材にした映画です。よく勘違いされますが、これはフィクション映画であり、ドキュメンタリーでもノンフィクションでもありません。何故なら、本当に極秘の部屋で行われているので、語られること自体が少ないことだからですね。

なので、実際のコンクラーベがどのようにして実施されているのか、事実の知識を入れておくとより映画を楽しめます。もちろん、前提知識が無くても楽しめるようになっています。

この記事では、コンクラーヴェの基本的な流れや歴史的背景、そして教皇選挙の意味などを、わかりやすいように解説していきます。最後には専門用語をまとめて解説するパートもありますので、ぜひ参考にしてみてください。


2. カトリック教会とローマ教皇の役割

ローマ教皇

2-1. カトリック教会とは

「カトリック教会」は、キリスト教を大きく分けたうちの一つで、世界で最も大きな宗派です。ヨーロッパや南米を中心に、世界のあちこちに信徒がいます。その本部はイタリアのローマにあるバチカン市国で、ここにローマ教皇が住まいを持ち、世界のカトリック信徒を導いています。

2-2. ローマ教皇の役割

ローマ教皇とは、イエス・キリストの使徒(しと)の一人である「聖ペトロ」の後継者とされる存在です。カトリック教会において最も高い地位を持ち、教会の教えや方針を示すとともに、世界の平和や人権問題などにもメッセージを発信します。国際社会においても大きな影響力があり、たとえば重要な国際会議や平和への呼びかけなどで注目されることも多いです。

しかし、教皇が永遠にその座にいるわけではありません。過去には教皇が自ら退位した例(ごくまれですが)もありますし、高齢によって亡くなることもあります。その際に、後継者を選ぶ必要が生まれます。それが、今回のテーマである「コンクラーヴェ」です。


3. コンクラーベとは何か?

コンクラーヴェ(Conclave)とは、ラテン語で「鍵がかかった部屋」という意味の言葉から来ています。これは、選挙を行う枢機卿(後ほど専門用語解説で説明します)が、外部との連絡を絶った状態で投票を行うことを表しています。

通常、コンクラーヴェはバチカン市国にあるシスティーナ礼拝堂で行われます。投票に参加できるのは、80歳未満の枢機卿だけで、人数は最大120人ほどと定められています(ただし、例外的に多少超えることもあるとされています)。教皇選出のための投票は秘密に進められ、投票結果が確定するまで、原則として枢機卿たちは外部と一切連絡を取ることができません。


4. コンクラーベの歴史

4-1. なぜ「鍵がかかった部屋」なのか?

中世の時代、教皇を選ぶのに時間がかかりすぎて、政治的な混乱や教会内部の対立が起こったことがありました。たとえば13世紀半ばのある選挙では、長い間決まらず、最終的には妥協案で教皇を選んだというエピソードがあります。

こうした混乱を防ぎ、スムーズに新しい教皇を選出するために、「外部からの圧力や干渉を遮断し、枢機卿たちを礼拝堂に閉じ込めてでも早く決めさせよう」という考えが生まれました。これが「コンクラーヴェ」という形式の始まりです。

4-2. 近代以降のコンクラーヴェ

近代に入っても、カトリック教会は世界規模で信徒を抱え、教皇の選出は依然として重要なイベントでした。特に20世紀以降は、メディアの発達によってコンクラーヴェの様子が世界中に伝わるようになり、多くの人が新教皇の誕生を見守るようになります。ただし、選挙の中身は非常に秘密であり、候補者の名前や投票結果は公表されません。

21世紀に入ってもその伝統は受け継がれ、最近では2013年に教皇ベネディクト16世が退位を表明したことで、コンクラーヴェが開かれました。その結果、アルゼンチン出身の枢機卿がフランシスコ教皇として選ばれています。


5. コンクラーヴェの流れ:選挙の手順

Embed from Getty Images

5-1. 外部との連絡遮断「エクストラ・オムネス」

コンクラーヴェが始まると、まず枢機卿たちはシスティーナ礼拝堂に入り、部屋の扉が閉められます。そこで「エクストラ・オムネス」(Extra omnes)というラテン語が宣言されます。これは「全員退場」という意味で、投票に関係ない人たちは全員礼拝堂の外に出ていかなければならないという合図です。これにより、礼拝堂は完全に枢機卿だけの空間になります。

5-2. 投票の方法

投票は無記名(名前を書かない)の紙に、自分が教皇にふさわしいと思う枢機卿の名前を書きます。その紙を折りたたんで、礼拝堂の前にある聖杯のような器に入れるのです。すべての票が集まったら開票され、多数決で候補を絞り込んでいきます。

しかし、単純な多数決というよりは、「全体の3分の2以上の票」を獲得する必要があるといった特別なルールがあります。ですから、ある候補が圧倒的に支持されなければ、何度も投票が繰り返されることも珍しくありません。

5-3. 煙の色でわかる結果

投票の結果はシスティーナ礼拝堂の煙突から出る煙の色で外部に伝えられます。

  • 黒い煙:まだ教皇が決まらなかったことを意味する
  • 白い煙:新教皇が選ばれたことを意味する

この煙を一目見ようと、バチカンの広場には毎回大勢の人が詰めかけます。白い煙が出ると、世界中のメディアが「新教皇誕生!」と一斉に報じるのです。

5-4. 教皇名の選択とお披露目

コンクラーヴェで選ばれた枢機卿は、まず「教皇の座を受けますか?」と確認され、本人が「はい」と同意します。その後、新しく選ばれた教皇は、自分が名乗る教皇名を決めます。これは聖人や歴代の教皇の名前から取ることが多く、「フランシスコ」「ヨハネ・パウロ」などがそうした例です。
そして、お披露目のときには、バチカンのサン・ピエトロ大聖堂のバルコニーに現れ、人々に初めて姿を見せます。このときの伝統的な言葉は「ハベムス・パパム(Habemus Papam)」、つまり「私たちは新たな教皇を得た」という宣言です。


6. 専門用語解説

ここでは『教皇選挙』の中で出てきた専門用語や、カトリック教会に関わる用語を簡単に解説します。

  1. カトリック教会
    キリスト教の最大の宗派。ローマ教皇を最高指導者とし、世界各地に信徒がいる。
  2. ローマ教皇(法王、Pope)
    カトリック教会の最高位にある人物。聖ペトロの後継者とされる。世界的にも大きな発言力を持つ。
  3. コンクラーヴェ(Conclave)
    新しいローマ教皇を選ぶ選挙。ラテン語で「鍵がかかった部屋」という意味。バチカンのシスティーナ礼拝堂で行われ、枢機卿が外部と遮断された状態で投票する。
  4. 枢機卿(Cardinal)
    カトリック教会で教皇の次に高い地位にある聖職者。世界各地の司教や高位聖職者の中から教皇によって任命される。コンクラーヴェでは投票権を持つ。
  5. バチカン市国
    イタリアのローマ市内にある世界で最も小さい独立国家。ローマ教皇が住み、カトリック教会の中枢機関「教皇庁」がある。
  6. システィーナ礼拝堂
    バチカンにある礼拝堂。ミケランジェロの天井画や壁画で有名。コンクラーヴェの舞台としても知られる。
  7. エクストラ・オムネス(Extra omnes)
    コンクラーヴェ開始時に発せられる言葉。「関係者以外全員退場」を意味する。
  8. ハベムス・パパム(Habemus Papam)
    「私たちは教皇を得た」という意味のラテン語。新教皇誕生の知らせとして用いられる。

7. おわりに

コンクラーヴェは、約2,000年の歴史を持つカトリック教会の伝統を象徴する大きなイベントです。選挙という言葉からは、私たちがよく知る政治選挙のようなイメージを抱きがちですが、その実態は「枢機卿のみが参加し、外部とは完全に遮断された中で行われる」という、非常に特殊なものです。

一方で、コンクラーヴェの様子や白い煙・黒い煙による合図などは、世界中の人々に大きな関心を集めています。教皇という存在が宗教的リーダーでありながら、世界の平和や社会の課題にもメッセージを発信する点で、多くの人が「自分たちにはどのような影響があるのだろう?」と興味を持つのでしょう。

学校の社会科の授業などではあまり深く扱わないかもしれませんが、コンクラーヴェを知ることは、カトリック教会だけでなく、ヨーロッパの歴史や世界の宗教事情を理解するうえで重要です。もし興味があれば、歴代教皇がどのような状況や時代に選ばれ、どんな活動を行ったのかを調べてみると、新たな視点で映画を楽しめるかもしれません。